資料名称春の明ぼの
作者名:歌川国輝
正月の江戸の風景。股引(ももひき)、向こう鉢巻の子どもが、大凧を揚げようとしている。羽根つきを楽しんでいた娘たちも手を休めてみている。凧の武者絵は曾我兄弟で、藤の巻狩の夜、父の仇討ちにいざ出発という場面である。凧の右隅に、たいまつと仇討ちの相手工藤祐経(くどうすけつね)の「庵(いおり)に木瓜(もっこう)」の紋が見える。背後は寄席なのか噺家(はなしか)の名が張り出してあり、福寿草の鉢がある。空には連凧も揚がっている。正月の大通りは子どもの天国で、邪魔でも年賀の武士を含め大人たちは容認した。